『ダンジョン崩し』(DUNGEON RAZE)の感想&レビューです。

70点基準で加減点、「仲間」がいないと-10点、ゲーム媒体ならではの体験重視、テンポや快適性が悪いと減点、ストーリーは採点対象外などのレビュー方針は以下のリンクより。
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1.概要

PSP『勇者30』の原作や多数のスマホゲームを作られている吉田 浩太郎氏によるインディー作品。
見下ろし型ツインスティックシューターで敵だけでなくダンジョンの壁も壊せるローグライト。
残機制により短時間で圧倒的な爽快感が得られることが特徴。

項目内容備考
発売日2025/1/5
ハードPC
外部ストア
メタスコア
ユーザースコア
レビューなし
オープンスコア
Steamレビュー85%非常に好評
AmaonレビューPCのみ
ゲームカタログ
平均クリア時間
ストーリーを教えて貰うwiki
スタッフロール(クレジット)人数
各スコアは執筆時点のもの

2.購入価格やプレイ記録

1月に突如としてリリースされ、動画に一目惚れ&リリースセールで210円だったため衝動買い。基本ダンジョンは2回約1時間でクリアし、クリア後に解放される無限ダンジョンに何度か挑んで計8時間プレイ。

『Vampire Survivors』(ヴァンサバ)ライクという声もあるものの、本作ではエイムが必要、落ちているアイテムを買って強化、仲間も買える、制限時間が数分、残機制など異なる要素が多くプレイ感は全く異なる。
ちなみにヴァンサバはアーリー当初から正式リリースまで追いかけて135時間もプレイしていた。

3.レビュー

短時間で何度もインフレを体感できる残機制と壁破壊の圧倒的爽快感

まず、誤解を恐れずに最初に述べると本作はイメージと異なり割とシビアなゲーム性となっている。

「壁や敵を壊してお金入手→落ちているアイテムや仲間を買って強化→さらに壁を壊す」というループであり、開始直後は1ブロック破壊すら時間がかかるため、自由に強化できない。一応、強化アイテムは火力や弾数やクールタイムなどが倍々で増えていくため、一つ強化するだけで掘りやすくはなっていくものの、強化するほどにアイテム価格も上昇していく。
さらに、制限時間が数分と短く、時間を過ぎると強い敵が表れるため、大して強化できずに焦って変な立ち回りをしてすぐに死んでしまう。なお、制限時間は1フロアごとの壁破壊率に応じて残り時間が増えていく。

初見開始時は壁をほぼ壊せず開始20秒で一つも強化できなかった。

しかし、一度死んでから「残機制」が効いてくる。一般的な残機制やコンティニューと異なり、本作の残機制は「強化とお金を全て引き継いで最初から」という仕様のため、再度プレイする1フロア目からすぐにインフレと壁破壊の爽快感を体験できる。これが本作の革新性かつ最大の特徴。
壁を壊すほどお金も大量に入手できてさらに強化できるため、インフレと爽快感のループに襲われる。

とはいえ、これはコンティニュー後の1フロア目の話であり、フロアを降りれば壁と敵もインフレしていくため、すぐに制限時間に追われるシビアな立ち回りに戻ってしまう。そして、壁が壊せなくなったタイミングでまたしても残機を使ってコンティニューすると、さらなるインフレと爽快感を味わえる。
なお、基本ダンジョン(閉ざされしダンジョン)は残機2回なので、この状態で最下層のボスを倒すのが目標となる。上手い人なら初見30分がクリア目安。

2回コンティニューすると1層の壁をほぼ破壊できるくらい強くなる。

いわゆるインフレ系ゲームは「長い時間をかけて強化して限界が来たら転生などにより永続強化」というシステムが一般的だが、本作は「残機制」を取り入れることにより短いスパンでインフレと爽快感のループを実現しているのが素晴らしい。

ついでに、複数用意されたBGMはどれもアップテンポで、壁破壊のSEも非常に気持ちいい音に仕上がっている。

永続強化とビルドの概念が生まれる無限ダンジョン

残機制によりインフレ体験できるものの、やはり最初からインフレした状態でもプレイしたいはず。
クリア後に挑める無限ダンジョンがその要望を満たしてくれる。

無限ダンジョンも基本ダンジョンと進め方は同じだが、残機が1回となっている。(少し特殊仕様だったがアプデにより変化した)
開始後の強さは基本ダンジョンと同じなので残機1回だと基本ダンジョンよりもインフレせずにゲームオーバーになってしまい、大して爽快感を得られない。しかし、挑戦後のスコアに応じて★が貰え、この★を割り振ることで永続強化が可能となる。

入手した★で能力強化。レベルを上げるほど必要な★も増える。

もちろん、最初は少しの★しか貰えないため大した強化はできないが、★5つもあれば明確に違いが分かるほど開始直後の立ち上がりが楽になり、コンティニュー後の爽快感も格別なものになる。これを繰り返して、さらに深部へ潜りスコアを更新していくのだ。
また、アプデにより帰還ポータルがランダム出現するようになり、帰還できるとスコア2倍になるため、行くか退くかの判断も重要になる。

22層で帰還した最高記録。このあと27層まで行けたが帰還できず200万止まりであった。

さらに、★50個程度で永続強化して挑むとステータス強化が極まり、最終的にアイテム価格が99900G固定となる。強化の上限はないものの入手できるお金は限られているため、この段階からどの能力を伸ばすのか取捨選択が必要になる。仲間構成および仲間強化も同様に価格が上昇していくため取捨選択が必要。
基本ダンジョンではあまり考えずに適当に強化していけばクリアできる調整なのだが、無限ダンジョンではどの仲間を入れるかが初期のビルド概念となり、最終的にはどの能力を伸ばすのかというステータスビルドの概念が生まれるという調整が非常に上手くできており感心してしまった。

中央右上の赤い宝石が火力アップ。Lv20あたりからはどのステータスを伸ばすのか考える必要がある。

時間がかかるデザインと何も得られない虚無感

ゲーム性とバランス調整の上手さは感嘆するほどだが、それ故の不満点も生まれてしまっている。

一つ目、時間がかかりすぎる。
残機制によるコンティニュー前提のデザインのため、無限ダンジョンで★50程度あると1プレイが余裕で1時間以上かかる。コンティニュー後の爽快感は凄まじいものの、1機目と同じようなプレイを繰り返すことになり飽きがきやすい。とはいえ、残機制を変えるとゲームバランスや爽快感まで全て変わってしまうためこれは仕方ないとも言える。

二つ目、スコア更新できないと何も得られない。
無限ダンジョンはスコアを更新できれば★を入手できるものの、スコアを更新できなければ何も得られないため無駄な時間だったという虚無感に襲われる。ローグライトなので当然とは言えず、例えば『不思議のダンジョン』シリーズはクリアできずともアイテムを持ち帰れたり、死んでも施設の拡大や仲間のアンロックなどの要素がある。
スコア更新に失敗したら何も得られないというゲーム体験は面倒なだけの仕様と言えるので、何かしら他の永続要素を追加してほしい、例えば、プレイするほど開始時の所持金が無限に増えていくという要素があれば、基本ダンジョンも無限ダンジョンも挑むモチベーションが上がる。(現状は★に応じて所持金も増える)

三つ目、画面やUIや説明の分かりにくさ。
強化が極まると仲間が20人になったり弾幕も激しくなって画面がごちゃつくが、レイヤー優先度がある程度上手く調整されているためそれなりに見やすい。とはいえ、それでも敵の攻撃が見えづらかったりするためまだまだ調整の余地があるはず。
UIについては、一時停止時のマップにもう少し情報を追加してほしい。具体的には有料アイテムと無料アイテムと仲間の色を分ける、階段表示など。また、破壊率は一時停止しなくても常に表示すべき
仲間はそれぞれ壁に強い、敵に強い、HPが高いなどの特性があるものの説明が少ない。説明がないことで自力で解明する楽しみはあるものの、それなら仲間毎に与ダメの色を変えるなどの工夫が欲しい

四つ目、制限時間の窮屈さ。
制限時間そのものはメリハリの付いた立ち回りに繋がるため不満に直結するものではないが、常に時間に追われて窮屈な体験になっていることも否めない。特に初見開始直後はすぐに制限時間がきてしまい、全く強化できずに死んでしまうため不評の要因にもなっている。
制限時間をなくすとゲームバランスが壊れてしまうものの、せめて基本ダンジョンには制限時間を数倍にしたイージーモードのようなものがあるといいかもしれない。

4.個人スコア

85点/100(最大100点)

※点数はレビュー方針に沿って「Steamおすすめする70点」を基準に加減点した感覚的なもの。

これまでにない革新性、壁破壊の気持ちよさ、価格の安さ、バランス調整や成長要素などの加点により90点。不満点はまとめて5点減点して85点とした。
総じて、インフレ系は時間がかかるという弱点を残機制により見事に改善し、さらにやり込み時のビルド要素まで備えた素晴らしいインディーゲームでありおすすめ。とはいえ、何も得られないプレイ体験ではプレイのモチベーションが沸かないため、別の永続要素をアプデで追加してほしい。
-2025/1/17

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