2020/7/25に『幻想水滸伝』のクリエイターによる新作RPG『百英雄伝』が発表されました。

2020/7/27よりKickstarterでのクラウドファンディング(以下、クラファン)が開始され、PC版制作となる最低目標金額50万ドルをわずか2時間で達成し、ストレッチゴールである家庭用ゲーム機向け制作もすでに決定しています。

参考:『百英雄伝』のKickstarterキャンペーン、記録的なスピードでサーバーが落ちるも無事に目標額を達成!

1&2のシナリオを担当された村山氏が中心となられていて、公開された情報を読む限りは名作と名高い『幻想水滸伝2』のオマージュみたいな作品になりそうです。

私自身、当時『幻想水滸伝』と『幻想水滸伝2』が大好きだったので初めてクラファンに参加し、その際に知ったことや知っておくべきことがあったので備忘録としてまとめておきます。

支援方法は他のブログ等があるみたいなのでそれ以外のこと中心ですが、JCB以外のクレカが必要です。
また、ベータアクセスはPC版(Steam)のみのため、未所持の人は今のうちに準備しておきましょう。
関連記事:STEAMデビューして1年間で分かった17のメリット

1.クラファン(キックスターター)用語

クラファンは日本ではまだ馴染みが薄く、かつ、キックスターター自体が英語圏のサービスで私自身用語が分からなかったため本項にメモしておきます。

●バック(Back)
プロジェクトを支援すること。0円バックも可能だが当然リワードはなし。

●バッカー(Backer)
プロジェクトに資金を提供し支援する人。

●プレッジ(Pledge)
プロジェクトに資金を入れて支援すること。バックとほぼ同義だが支援金額を指すことが多い。

●リワード
プロジェクトの実現協力のお礼としてクリエイターがバッカーへ提供するお返し。

●ファンディングゴール
プロジェクト達成に必要な最低限のコスト。これを超えて初めて集めた資金を回収できる。

●ストレッチゴール
ファンディングゴール以上の資金を集めた場合に、クリエイターが設定する新たな目標。

2.クラファンは通販ではない

『百英雄伝』のキックスターターページにはリワードとしてゲームのみならず魅力的な特典付きで相場よりも低価格で提供されているように見えます。
かくいう私も安いことが後押しとなり今回初めてバッカーになりました。もちろん制作発表が嬉しくて支援したという側面はありますが、もしリワードがなければ1000円程度の支援額だったでしょう。

しかし、キックスターターはあくまでも開発予定とされているプロジェクトへの【投資】なんですね。
すでに存在している製品であれば支払えば届くのが当たり前ですが、クラファンはファンディングゴールに届いて初めて開発開始されるため、開発過程で発生する様々な問題により最悪の場合は開発中止もしくは一部要素が劣化というリスクも念頭に置いておく必要があります。

とはいえ、『百英雄伝』においては過去のクラファンの成功例/失敗例を精査し、それを踏まえた上で懸念事項について詳細に記載されているため過去のプロジェクトよりは信頼してもいいと思います。

3.過去の国産クラファンゲーム事例

『百英雄伝』が精査したであろう過去の国産ゲームのクラファンを私も調べてみました。

●『Mighty No.9』 2013年9月 総プレッジ約380万ドル

元カプコン稲船氏によるロックマン風作品。
Xbox 360・PS3・Xbox One・PS4・Wii U・Windows・Mac・Linux・3DS・PS Vitaと多すぎるプラットフォーム展開を予定してたせいで度重なる延期や対応しないプラットフォームが発生してしまった。
参考:約4億円を集めたロックマンの稲船敬二氏によるアクションゲーム「Mighty No.9」が発売されるも賛否両論の事態に

●『Bloodstained』 2015年5月 総プレッジ約550万ドル

元コナミ五十嵐(IGA)氏による悪魔城ドラキュラ風作品。
発売後の評判も良く売上100万本突破し大成功と言えるが、予定していたWii U・PS Vita・Mac・Linux版は開発中止となり、Switch版はクオリティ劣化に批判が起こり公式がアプデ対応したらしい。
『百英雄伝』は元コナミ繋がりでIGA氏に色々アドバイスを受けていると思われる。
参考:炎上?のスイッチ版『Bloodstained: Ritual of the Night』 505 Gamesがパッチでのパフォーマンス改善を約束

●『シェンムー3』 2015年6月 総プレッジ約720万ドル(追加支援含む)

元セガ鈴木氏によるシェンムーの続編。最速100万ドルギネス記録。
超大作の続編ということでビデオゲーム部門として歴代1位の調達額らしいが、PC版はSteam配信予定だったにもかかわらず直前にEpic独占配信となったことで炎上し、売り上げも芳しくない様子。
2019年発売作品としてはグラフィックが見劣りするのも原因な気がする。(個人的にアクションゲームのグラフィックは面白さの要素である「爽快感」に直結すると思っている)
参考:『シェンムーIII』パブリッシャー「売れ行きは期待を下回っている」

●『R-TYPE FINAL 2』 2019年6月 総プレッジ約110万ドル

元アイレム九条氏によるシューティングゲーム続編。
執筆時点では発売されてないものの、支援者向けの体験版が配信され開発は順調に進んでいる様子。
参考:「R-TYPE FINAL 2」の支援者向け体験版が,アーリーアクセスとしてSteamで7月より配信へ

●『The Wonderful 101』 2020年2月 総プレッジ約220万ドル

プラチナゲームスによる元WiiUタイトルの移植リマスター。
2020年6月に問題なく発売され、特に炎上した様子もない。
参考:PC/PS4/Switch用ソフト「The Wonderful 101: Remastered」が本日発売

調べた限りではこんなところです。

『百英雄伝』のプロジェクトページには過去の炎上事例に対して以下の記載があり安心できます。

・計画性に欠けたストレッチゴールは設けない
・特定プラットフォームへの独占リリースはしない
・クオリティのベースラインを一つに絞ったプラットフォーム展開
・販売店に出荷される前にバッカーに届ける

4.クラファンで集めた資金≠開発費

3項の通り、有名クリエイターや作品には億を超える資金が集まり、規模にもよりますが集めた資金で十分ゲーム開発できそうな気はします。
ですが、この集めた資金をそのまま全て使えないことが『百英雄伝』のプロジェクトページで明らかにされてます。

ワーストケースの場合
・キックスターター手数料:10%
・リワードの手配費用:25%
・プラットフォーマーへのライセンス料:30%

残りのわずか35%がゲーム開発に使える資金とのことです。
ライセンス料はどのプラットフォームもほぼ同じなので30%が引かれるのは分かってましたが、それ以外の費用で35%も引かれるとは驚きです。

残った費用でゲーム開発を行うことは困難に思えますが、それについてもプロジェクトページにしっかりと記載されています。

私たちが作りたいと思っている本格的なゲームを作るためには、パブリッシャーからの資金、私たち自身が捻出した資金、そしてバッカーからの資金のコンビネーションが必要なのです。

興味を持ってくれている企業はいくつかありますが、IPの所有権など、作りたいものを作るためにはまず今の時代に質の高い往年のスタイルのJRPGをリリースすることに対して需要があることを理解してもらう必要があります。

要は今回のクラファンは、『百英雄伝』のIPを所有しつつ大手パブリッシャーに資金を提供してもらうための人気証明も兼ねてるということですね。
おそらく3項の他のクラファンゲームもパブリッシャーから資金提供されているのだと思います。

5.ゲーム開発にかかる費用

『百英雄伝』のプロジェクトページには中々知る機会のないゲーム開発にかかる費用についても記載がありました。

現実的に言うと、ゲームを作るにはお金がかかります。そして、ピクセルアートは、3Dモデルと同じくらい、クオリティを追求すればそれ以上の費用がかかります。古いエンジンを使用している場合、移植には何億円もの費用がかかることもあります。

ピクセルアート(ドット絵)の方が費用がかかる、移植には数億円かかるなど興味深い内容です。
世間的には「ドット絵なら安く簡単に作れる」というイメージがありそうなのでこういう情報はもっとメディアで取り上げて広めて欲しいところです。

また、マルチプラットフォームについては具体的な記載があります。

低スペックのハードがキャンペーンに記載されている場合、それは常にあまりにも高価で、しばしばテクスチャのダウングレード、大量のコードの書き換えを必要とし、事実上、2つのゲームを作ることを意味しています。

Switchについては携帯モード(Switch lite)でも動作させる必要があり、ドックモードのときより動作スペックが落ちます。
携帯モードでのスペック比較は諸説ありますが、概ねPS3を少し超える程度の動作スペックのようです。

つまり、switch向けを作るということはPS3~5の3世代機に渡って動作するゲームを作ることとほぼ同じで確かに開発費が跳ね上がりそうです。2つのゲームを作ると言っても実際は開発費1.5倍というところでしょうか。

すでにコンソール機向けのストレッチゴールをクリアしているため、「任天堂ハード向けのゲームを作成する予定」となっていますが、Switch版ではフレームレートやロード時間等でゲーム体験が変わってくるはずです。
開発陣にはそういったことを意識せず素晴らしいゲームを作ってほしいので是非とも任天堂からスペックアップしたSwitch2を発表してほしいですね。

とりあえず以上です。他に何か気になることがあれば追記するかもしれません。
ー2020/8/4

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