『パルワールド』(Palworld)が歴史的なヒットを飛ばしています。
今は未完成のアーリーアクセス中ということもあり、パクリ論争がほとんどでゲーム性について語られることが少ないですが、『PUBG』が登場してシュータージャンルの主流がバトロワになったように、『マイクラ』(マインクラフト)から誕生したサバイバルクラフトが『パルワールド』登場の以前以後で語られることになるほどの作品です。
『パルワールド』にはいくつもの革新性があり、それを支えているのは「生きている」と錯覚するほどの仲間と「生活」や「冒険」できることです。
そして、これは『FF15』にも共通することに気付いたのでまとめておきます。
1.パクリ論争について
まず、『パルワールド』を語る上で避けては通れないこの点について私の考えをまとめておきます。
私はスマホの『ポケモンGO』『ポケモンユナイト』『ポケモンスリープ』を少し触ったくらいで、メインラインの『ポケモン』はプレイしたことがありません。また、その他のモンスター収集ゲームもプレイしたことがありません。その理由は後述します。
そんな私の目から見て『パルワールド』のモンスターデザインは『ポケモン』に似てると思います。
しかし、似てるだけです。
仮に3Dモデルの盗用などがあれば一発アウトですが、株式会社ポケットペア社長の溝部氏は過去のインタビューや経歴からも非常に賢いことが読み取れ、盗用などのリスクを冒すメリットが全くありません。売れたところで訴訟された場合はそれ以上の損失となるのは明白なので、法務レビューにより問題のないデザインとしているようです。
第三者の弁護士見解も記事化されており、同じような観点で弁護士を交えたデザインレビューをしているのだと推測します。
モンスター収集/モンスター育成ゲームと呼ばれるジャンルにおける圧倒的なトップが『ポケットモンスター』シリーズだと認識しています。そして、個人的には『ポケモン』と『パルワールド』を比較するのは恐れ多いぐらい、『ポケモン』は素晴らしいと思っています。
<中略>
「発売できるのか」というのは少し過激な質問ですが、弊社は真剣にゲーム作りに取り組んでおり、当然ですが、他社の知的財産権等を侵害する意図は全く御座いません。法務のレビューも受けており、現時点で他社様から何らかの具体的なアクションを頂いた事も御座いません。インターネットでは様々な噂が飛び交っておりますが、安心してご購入頂ければ幸いです。
『パルワールド』開発者インタビュー。「Steamウィッシュリスト180万」「事例研究したのに前例ない仕様に」異例だらけの新作オープンワールドゲームの破天荒すぎる船出事情
そもそも、デザインが『ポケモン』に似たゲームというのは過去にいくつも登場しています。
これらは全てデザインだけでなくゲーム性すらも『ポケモン』に似ており、SwitchやPCPSスマホなどでも発売されています。売上としてもMMO要素のある『Temtem』は100万本超え、『Nexomon』は3が発表されているほどシリーズ展開もされています。
もちろん長年のプレイヤーからは似てないと言われる可能性はありますが、少なくとも未プレイの私にとっては似ているように感じられ、画像だけを見せられたら『ポケモン』のモンスターだと思います。
さらに言えば最近の本家デザインをいくつか見たところ、ポケモン風を感じないモンスターも結構いました。
初期のデザインや御三家に相当するものはポケモン風を感じられますが、25年以上の歴史を持ち1000種類ものモンスターがいれば全てを「ポケモン風」として統一するのは難しいのでしょうね。
まとめとして似てる似てないは個人の主観や感覚でしかないので、それだけでは違法性を問えないというのが私の考えです。
発売後に任天堂から侵害行為があれば適切に対応するといった旨の声明が発表されましたが、『パルワールド』のトレーラーは2021年に公開され3日で1000万再生されるほど反響があったにもかかわらずアクションがなかったようなので今後も何もない可能性は高いと思います。
2.『パルワールド』の革新性
『パルワールド』はインディーゲームとして史上最高クラスの売り上げを叩き出しており、デザインが『ポケモン』に似ているだけのゲームでないことは想像できると思います。似ているだけで売れるなら『Temtem』はもっと売れていたでしょう。
それだけでなくSteam評価も執筆時点で18万レビュー中94%という極めて高い評価を獲得しています。
この評価に繋がっているのは他のサバイバルクラフトと比較してこれまでになかった革新性があるためです。
本項ではそれをいくつか挙げていきます。
なお、私はサバイバルクラフトは『マイクラ』『テラリア』『サブノーティカ』『ノーマンズスカイ』『クラフトピア』をプレイしたことがあり、基本的にこのジャンルはクリアしたことがなく苦手です。クラフト(建築)で特に作りたいものもなく、サバイバル要素の所持数制限や空腹などの要素が億劫に感じてしまうためです。
また、インタビューでも語られている通り『パルワールド』は恐竜サバイバルクラフトの『ARK』を参考に作られており、以降挙げる項目がすでに他のサバイバルクラフトに実装されている例があるかもしれませんが、私が知らないだけなので悪しからず。
2.1 サバイバルクラフトとモンスター収集ゲームの融合
まず、第一に『ポケモン』のようなモンスター収集/育成ゲームとサバイバルクラフトが完璧に融合できていることが挙げられます。
これは、『パルワールド』の核となるコンセプトとなっており、インタビューでもこの発想からスタートしたことが語られています。
弊社の『パルワールド』は、「オープンワールドサバイバルクラフトというジャンルで、モンスター収集・育成という要素を加えられないか?」という発想からスタートしています。『ポケットモンスター』を偉大な先人として参考にはしているものの、『パルワールド』をプレイすれば、そのイメージが『ポケットモンスター』とはまったく異なることがわかると思います。むしろ仕組みとしては『ARK: Survival Evolved』の方が近いのかなと思っています。
『パルワールド』開発者インタビュー。「Steamウィッシュリスト180万」「事例研究したのに前例ない仕様に」異例だらけの新作オープンワールドゲームの破天荒すぎる船出事情
ポケットペア社の得意とする複数ジャンルの融合であり、「融合」と一言で表現するには語りつくせないほど様々な革新性をもたらしており、以降の項目にも関連していきます。
2.2 サバイバルクラフトとしての丁寧な導線
『パルワールド』の進め方としては大まかに、何もない状態から作業台を作り→パルを捕まえて→拠点を作り→新たなパルや素材を求めて冒険し→さらに拠点&冒険範囲の拡大という流れになっています。
これらのやるべきことが全てゲーム内で提示されていて、おそらく初めてサバイバルクラフトをプレイする人でも迷わずにこの流れに乗ってプレイすることができます。
『マイクラ』『テラリア』はこの導線があまり整備されておらず、私がサバイバルクラフトが苦手な一因になってました。
2.3 誰でも簡単に拠点の自動化
前作『クラフトピア』ではサバイバルクラフトにおける「自動化」がテーマとなっており、文明を発展させてプレイヤーが自由な発想で自動化設備を作ることが可能となっていました。原点である『マイクラ』でも自動化は可能だと認識しています。
しかし、自動化設備を作るために大量に素材を集めたり複雑に設備を繋ぎ合わせたりなどクラフトが苦手な私にとっては億劫に感じてしまいます。
対して、『パルワールド』は捕まえたパルを拠点に配置するだけで各作業が自動化されます。
各パルには採集が得意だったり、運搬が得意だったり、手作業が得意だったりなど様々な作業適正が設定されていて、パルを拠点に配置すると自律的にそれらの作業を働いて手伝ってくれるのです。
もちろん拠点を離れてもずっと作業を続けてくれるので非常に快適に自動化できます。
2.4 初(?)のモンスター収集×オープンワールドアクションRPG
『パルワールド』はサバイバルクラフトですが、広大なオープンワールドに100種類以上のパルが存在し、それらを三人称視点のアクションで戦ったり捕まえたりして成長していきます。捕まえたパルは魔法のような様々な能力で一緒に戦ってくれたり、騎乗することで探索範囲を広げたりと役立ってくれます。
つまり、モンスター収集のオープンワールドアクションRPGとしても戦闘や探索など「冒険」できるわけです。
そしてこれがヒットした主要因である気がします。私自身サバイバルクラフトがやりたかったわけではなくこの要素に魅かれて購入に至っています。
モンスター収集ゲームは『ポケモン』以外にも『デジモン』『ドラクエモンスターズ』『妖怪ウォッチ』など有名シリーズは存在しますが、基本的にプレイヤーがモンスターに指示するターン制コマンドと認識しており、オープンワールドアクションRPGとして作られたタイトルはこれまでにないと思います。私はプレイヤー=主人公として仲間と一緒に戦いたいのでこれらのタイトルをプレイしてこなかったのです。
『パルワールド』には銃撃や解体などブラックな要素もありそれに抵抗感を覚える人もいるようですが、嫌なら使わないという選択肢も用意されていますし、個人的にはこれまでのモンスター収集ゲームのように自らがリスクを負わず手も汚さずに気絶するまで仲間に戦わせる行為を強制する方がよっぽど残酷に感じます。
ちなみに、『ドラクエトレジャーズ』はモンスター収集のアクションRPGとして少し期待していたのですが、モンスター収集ではなく宝物収集がメインになっていたのが違うなと思い見送ってしまいました。Switch時限独占によりグラフィッククオリティが低かったのも見送った一因です。
革新性ではないですが『パルワールド』はUE5による次世代グラフィックが体験できるのも良い点ですね。
2.5 拠点内のボックス共有
少し細かな仕様の話です。
サバイバルクラフトの当たり前の要素として、アイテムの所持数が制限されており、アイテム収納ボックス(チェスト、箱)を使うのが必須となっています。
『パルワールド』でもボックスは必要となりますが、拠点内に配置したボックス内アイテムは拠点にいる間は共有され、クラフトする際にボックス内のアイテムから直接作ることができます。
大量のボックスから素材を探してわざわざ取り出す必要がありません。
細かい点ですが快適性に大きく繋がる仕様となっています。
2.6 細部まで設定可能なワールド設定
『パルワールド』は他のサバイバルクラフトと同じように難易度が用意されています。
ソロでプレイする場合には4段階の難易度を選択でき、さらに詳細な項目を自由にカスタマイズできます。(オンラインマルチのサーバーでプレイする場合には難易度は選べません)
クラフト要素の素材入手量、サバイバル要素のスタミナや満腹度、アクションRPG要素の与ダメ被ダメ倍率や入手経験値量、モンスター収集要素のパル出現数や捕獲率などなど多数の項目が用意されています。もはや公式チート状態です。
しかもワールドをロードする際にこれらの設定は自由に変更できるので、「今だけは素材や経験値を増やしたい」といったことも可能となっています。
個人的にはリメイクリマスターを除いて公式チートは否定的に感じていましたが、サバイバルもクラフトも苦手な私にとってはこの設定があるおかげで快適に楽しくプレイできているので考えは変わりました。
ただし、サバイバル要素であることは理解しつつも重量制限だけは面白さに繋がっていないと感じているので、できれば製品版までに重量制限もワールド設定に追加して欲しいですね。
2.7 拠点での「生活」が楽しい
おそらく全てのサバイバルクラフトにおいてプレイ時間の大半を拠点で過ごすことになります。集めた素材から別の素材や新装備や新設備を作ったり、効率的な配置を考えたり私にとっては面倒な時間です。
『パルワールド』も同様に拠点にいる時間が大半を占めるのですが、ソロでプレイしていても拠点にいる時間が全く苦になりません。
なぜならパルたちが拠点内を生き生きと動き回っているためです。
彼らは形も大きさも人間とは異なり、その体を活かした様々なモーションで採集や運搬などの作業をしてくれます。『ポケモン』に似た可愛らしいデザインがここで最大限に発揮され、十人十色ならぬ百種百色のモーションと表情が用意されていて見ていて飽きません。
さらに、彼らはひたすら作業するわけでなく、お腹が空いたらご飯を食べ、夜になれば眠り、疲れたら温泉に入ったり、やる気をなくしてサボったり、働きすぎてうつ病になるなど、「生きている」と錯覚するほどです。
このおかげで、新たなパルを捕まえたり新たな施設を作って拠点を拡張したいというモチベーションの維持が長く続きます。
難しいことをせずとも大半を過ごす拠点での「生活」が楽しいことが『パルワールド』最大の革新性なのです。
そしてこれは次の項目に繋がります。
3.『パルワールド』と『FF15』の共通点
拠点での「生活」が楽しいことが『パルワールド』の最大の革新性と述べましたが、これが実現できたのは本作が「感情」をテーマに作られているためです。
『パルワールド』では、主軸となるモンスター「パル」を彼らが感情的に自分から動くことで、『クラフトピア』とはまったく違う体験になるんじゃないかという仮説を立てて作っています。
『クラフトピア』で掲げた一つのテーマ「オートメーション」のおかげでいろんなユーザーがめちゃくちゃなことをして、それが物理演算の挙動と掛け合わさり、開発者も想定していないようなとんでもない挙動をする事が注目を浴びたと思っています。
『パルワールド』では、さらにそれを発展させ「感情を伴うオートメーション」の実現を目指しています。「パル」はエサを上げたり撫でたりすると思いっきり喜びますし、粗末に扱うと泣き出して働かなくなります。私たちは小規模のインディーゲーム会社なのですが、そこは今回は頑張ろうということで少し無理をして、感情表現に多くのコストを割きました。100体以上のパルの撫でる演出を作成する手間を想像してみてください(笑)
『パルワールド』開発者インタビュー。「Steamウィッシュリスト180万」「事例研究したのに前例ない仕様に」異例だらけの新作オープンワールドゲームの破天荒すぎる船出事情
仮説だった「感情を伴うオートメーション」が見事にハマり、歴史的な売上と高評価に繋がっているのです。
「ポケモン風」のデザインにより注目を集めたのは事実ですが、例えば『Fall Guys』や『Party Animals』のようなデザインでも生き生きと動いてくれるならば同じようにヒットしていたでしょう。
そして私は『パルワールド』をプレイ中に既視感があり、真っ先に『FF15』(FINAL FANTASY XV、ファイナルファンタジー15)が思い浮かびました。
『FF15』は2016年に発売されたオープンワールド(風)のアクションRPGであり、サバイバルクラフトではないので拠点を作ることもなければモンスターを収集することはありません。代わりに、主人公含めた4人の仲間達と旅をします。その旅の最中にはRPGらしい戦闘や探索などの「冒険」もあれば、キャンプをして料理を食べたり、写真を撮ったり、釣りをしたりなどの「生活」も用意されています。
さらに、『パルワールド』と異なりストーリーが用意されているので、この4人には進行に応じた掛け合いがあり、それとは別に自由に行動できるオープンワールドでもあるので状況に応じて多彩な会話を繰り広げてれます。
戦闘中の掛け合いはもちろんのこと、昨日食べた料理のことであったり、キャンプしないと寝不足や空腹をボヤいたり、撮られた写真にツッコミを入れたり、果ては冗談を言い合ったり世間話などもしてくれます。7年経った今でも聞いたことのないセリフがあるくらいです。
極めつけは、一般的なRPGの仲間は後ろを着いてくるだけなのに、彼らは戦闘中以外でも主人公の周りを自由に動き回ります。これらの会話や動きのおかげで仲間達が「生きている」と錯覚してしまうのです。
これは『FF15』のテーマ(キーワード)にもなっています。
――『FFXV』の物語は“親子”がテーマとのことですが、ゲームプレイのコンセプトについてもおうかがいしたいです。
田畑 最初にキーワードを3つ、決めました。“旅”と“仲間”、そして“クルマ”です。“旅”は、本当に旅をしたような体験を、このゲームで味わってほしいということ。そのために、なるべくシームレスな世界を、ある程度引いた視点でとらえられるようにするなど、旅を実感させるための手法を探っていきました。そして旅という体験を、最大化するのが“仲間”の存在です。彼らをリアルに感じられれば、パーティー全員に感情移入でき、旅で起こった出来事に一喜一憂できる。そのために、仕草や言動、ノクトとの距離感にまでこだわりました。AI的にもアニメーション的にも一足飛びには完成度が上がらず、すごく地道にやらなければならない部分で苦労も多いんですけど、誇れるものになってきたなと。彼らといっしょにいるのは、とても楽しいですよ。
『FFXV』のプロジェクトについて田畑端氏と野末武志氏を直撃! 「もう一度、『FF』が勝つ姿を見せたい」【ダイジェスト版】
私は『FF15』が数少ない「仲間がいるオープンワールドアクションRPG」だからこそ大好きなのだと考えていました。しかし、『パルワールド』をプレイしたことで「生きている仲間」との「生活」や「冒険」が楽しいから好きなのだとはっきりと自覚して言語化することができました。『FF15』後半のリニアな展開ではこれらが全て奪われてしまうから対照的に辛い体験になっているのです。
また、『FF15』にはプレイヤーの前を仲間が走るという今でも珍しい仕組みがあり、『パルワールド』でも仲間のパルがプレイヤーの前を走ってくれるという共通点もあります。『FF15』とは異なり常に一定の距離を保って前を走ってくれるだけですが、これも仲間が「生きている」と感じられる一因になっています。
おそらく『パルワールド』側は『FF15』を全く参考にしていないと思いますが「感情」をテーマにしたことで似たような体験を生み出す結果になっているのは興味深いですね。
おそらくリアルな仲間との「生活」を感じられる作品は他にもあると思いますが、それだけでは片手落ちであり「冒険」とセットになることで最大級の楽しさに繋がるのだと感じています。同様に「冒険」だけでも不十分なのでしょう。
『FF15』はシナリオ後半の描写不足が否めず、それが主要因で評価を下げることにも繋がってましたが、実況配信でも見れる現代においてシナリオでゲームを評価するのはナンセンスです。仮にシナリオだけを評価するのであればシナリオのない『パルワールド』は0点になってしまいます。
とはいえ、『FF15』は前半と後半の対比があるからこそ2024年になっても史上最高のエンディングの一つとして海外メディアで取り上げられているほどなので体験として素晴らしいのは間違いありません。
『パルワールド』はクラウドによりスマホでも、『FF15』はバージョンによりけりでスマホ含む現行機全機種展開されてるので未プレイの方は是非「生きている仲間」との「生活」や「冒険」を体験してみてください。
-2024/2/6
本記事で紹介しているものはデバッグコマンドを使った結果としてチートができるもので…