『BALL x PIT』(ボールピット)のクリアレビューです。

70点基準で加減点、「仲間」がいないと-10点、ゲーム媒体ならではの体験重視、テンポや快適性が悪いと減点、ストーリーは採点対象外などのレビュー方針は以下のリンク。
関連記事:ゲームのレビュー方針まとめ
1.概要
ブロック崩し×縦シューティングで、『Vampire Survivors』(ヴァンサバ)のような経験値集めと3択強化をしていくローグライト。さらに永続強化としてブロック崩しで拠点建築(こちらはピンボールの方が近い)をする要素もある。
大量の敵を倒す爽快感、2つのボールを進化や融合してプレイするたびに新たなボールが生まれるワクワク感、1プレイ10分前後で何度も違った遊びができる中毒性やリプレイ性が特徴。
| 項目 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 発売日 | 2025/10/16 | |
| ハード | PC/PS5/XboxXS/Switch | 初日ゲームパス対応 |
| 外部ストア | Fanatical | 大抵はSteamより安い |
| メタスコア ユーザースコア | 85 8.8 | PC版 |
| オープンスコア | 87 | |
| Steamレビュー | 95%圧倒的に好評 | |
| Amaonレビュー | - | |
| ゲームカタログ | - | |
| 平均クリア時間 | 22.5時間 | |
| ストーリーを教えて貰うwiki | - | |
| スタッフロール(クレジット)人数 | 303人 | ゲーム自体は1人+友達で開発 販売元やローカライズで増えてる |
2.購入価格やプレイ記録
前提としてブロック崩しは好きなので、流れてきた記事でブロック崩しローグライトとして非常に興味が沸いた。
発売1か月前くらいに体験版をプレイしたところドハマりして、1ステージしかないのに10時間もプレイ。体験版ですら何度も遊びたくなる中毒性と長時間遊べるような高難易度モードが10段階あるなど工夫が施されていて、GOTY級の面白さと感じていた。
待ち遠しくなるほど期待しまくって発売日にSteam版を購入。ヴァンサバを持っていたのでバンドル割引で10%オフ1530円。
おそらく製品版を15時間(+体験版10時間)ほどプレイして、最終ステージクリア&エンディング。途中でオートモードが解禁されるのでそれによる放置プレイも含む。クリア後の高難易度ステージや無限強化などエンドコンテンツも用意されてるのでまだまだプレイ中。
3.レビュー
新規性×良い点
●ブロック崩し×縦シューティングという新ジャンル
従来のブロック崩しは、発射台は左右にのみ動ける、反射するボールは撃ち返す、撃ち返せなかったらミス、ステージ制で全ブロックを壊すとクリアというシステムであり、パワーアップ要素があってもミスや細かいステージで区切られていることで「爽快感が途切れる」作りになっていた。
本作は公式にも「ブロック崩し」とされているが、そもそものベースとなるシステムがこれまでのブロック崩しとは全く違う。ブロック崩し×縦シューティングを融合したものに、エッセンスとしてヴァンサバ風のローグライトが掛け合わされたシステム。
ブロック崩しとして見ると、
プレイヤーである発射台が上下にも動ける、ボールを複数連射する(これはスマホゲームのBallz感)、ボールを撃ち返さなくていい(下に行くと手元に戻る)、ブロックである敵が上から絶え間なく迫ってくる、敵が下まで来るとダメージ、敵が弾幕などで攻撃してくる、高さの概念がある、全ブロックを壊すのではなくステージ最奥のボスを倒すとクリア、というのが革新的。
この中で敵が上から来たり、弾幕だったり、ボスを倒すとクリアというのは縦シューティング的な要素。
縦シューティングとして見ると、
自機を動かしながら斜めに撃てる、弾であるボールは連射&反射するので雑に狙える、一撃で死なない体力制、というのが本作ならではとなっており、いずれにせよこれまでなかったプレイ感覚。斜めではなく正面に撃った方がいい場合もあり戦略性も生まれている。
これにヴァンサバのように、落ちた経験値を集める、3択で武器やパッシブを選択という要素が加わっている。
一応ヴァンサバ系として見ると、
自動攻撃のオンオフ可能、攻撃は上側160度範囲のみ狙える、武器の進化と融合により武器枠が空いて新たな武器を取得できる、強化は2回(レベル1から3まで)なのですぐ進化できる、敵はプレイヤーではなく画面下に向かって動く、生き残るのではなくボスを倒すことが目的、ステージクリアすると10段階の速度アップする高難易度モードが登場、というのが革新的。
成長システムが異なるヴァンサバライクはいくつもあるが、敵の方から自分に寄ってきて全方位を自動攻撃するヴァンサバ系とはプレイ感覚が全然違う。ツインスティックシューターとも違う。そのため、ヴァンサバライクと思ってプレイすると、特に序盤は爽快感に欠けるという感想を抱く可能性はある。
ちなみに、Redditに本作のプロトタイプ動画が投稿されており、初期の頃は完全にブロック崩しがベースで上下に動けなかった様子。撃ち返さなくてもいいシステムは当初からあり、従来の「爽快感が途切れる」という問題を解決しようとしてたのは見て取れる。
ブロック崩しの元祖はアタリから1976年に発売された『ブレイクアウト』らしいので、本作はローグライト要素抜きに50年ごしに初めて従来のブロック崩しから脱却して進化した新ジャンルと言える。
●進化×融合で武器枠が空くという革命
ヴァンサバをプレイした当時、特定のパッシブを持っていると武器が進化するシステムは本当に驚いたし組み合わせを探すのが楽しかった。本作でも進化はあるのだが、こちらも従来のヴァンサバ系とは違うシステム。
本作の武器はすべてボールとなっており、能力を持った特殊ボールと能力のない小さなベビーボール(ノーマルボール)を連射していく。
特殊ボールは貫通したり、範囲攻撃したり、デバフを付与したり、ベビーボールを生み出したりなど60種類以上登場。
この特殊ボールとパッシブが4枠ずつ(後半に+1枠)。そしてレベル3にしたボール同士は2つの能力をそのまま引き継いだ1つのボールとして「融合」できる。これにより枠が空くので新たなボールを取得可能。
また、特定の組み合わせでは新たな強力な特殊ボールへと「進化」する。進化した場合はレベル1からとなり、レベル3になればさらに融合することも可能。つまり進化した2つのボールを融合すれば、1つの枠に実質4つの能力を持った特殊ボールを所有している状態になる。しかもその分の武器枠が空くので、一度のラン中に別の武器をどんどん引けるのが新感覚。
また、進化した場合は専用アイコンになり、融合した場合はどちらかのアイコンをベースに色も変わる。60×60以上のアイコンがあることになり、毎回新しいボールが生み出されるので同じビルドになることは二度とない。一度進化するまでは組み合わせを探す必要があり、試行錯誤の末に新たな進化や強力な融合を見つけるワクワク感がずっとある。
これにより強力なボールによる爽快感と何度も挑みたくなる中毒性が生み出されている。
ヴァンサバ系では武器とパッシブの組み合わせによる進化が当たり前になってると思われるので、今後は本作の武器同士の進化と融合&武器枠が空くというシステムが標準になってほしいほど画期的だった。
ちなみに本作はSE(音)もめちゃくちゃいい。特殊ボールやエフェクトごとに音が異なるのはもちろん、それぞれが気持ちいい音になっている。また、後述する拠点建築の方でも建築物ごとに違う音が鳴るなどSEのこだわりが凄い。SEだけで加点できるほどの作り込み。
●ブロック崩し×拠点建築という革命
本作ではステージから戻るたびに拠点建築をすることができる。ステージ内で設計図やお金を入手してマス目上に配置すると永続強化につながるという仕組み。
建物は配置すると建築中の状態になり、建物以外に素材パネルもある。普通の拠点建築ゲームなら時間経過で建物が完成して、素材も勝手に収集されるのだが、本作ではそれをブロック崩しで行う。
解禁したプレイアブルキャラクターたちを拠点の下から撃ち出して、キャラクターが通ったパネルからは素材を回収し、建築中の建物にぶつかると建築が進む。建築をブロック崩しでやる必要はあるのかという疑問が浮かびそうだが、ぶつかることで効果を発揮するような建物もあって、反射を計算して効率よく配置するのが想像以上に楽しい。
しかも、建築による永続強化やアップグレード要素も従来のヴァンサバ系より強力。終盤では最初からレベル3のボールを持っていたり、武器とパッシブが5枠になったり、ランダムで1~5レベル強化されるアイテムが最低でも3レベル上がったりする。体験版をプレイしたときはその辺りは変わらない部分と思ってたので、「そこ強化していいの?」と驚いたと同時にめちゃくちゃ嬉しかった。

そして、「素材集め」という要素のある建築ゲームにおいては建築の方にもエンドコンテンツが必要なのだが、本作では最終的に無限にアップグレード可能な建物が出てくる。無限に強化できるので集めたお金や素材が永遠に無駄にならない。
クリア後の高難易度ステージ&10段階の高速化はかなりの強化が必要なので、ぶっ壊れるほど永続強化しても挑みがいがあるのも嬉しい点。
ちなみに、後半は敵の体力が多いので永続強化したうえでDPSが足りないとクリアできないと思われがちだが、パッシブにより耐久ビルドを構築できれば敵を倒せなくてもボスまで到達できるはず。ボスはプレイスキルで攻撃を避けさえできればいずれは倒せる。
●モード変化×複数キャラクターという他ゲームには真似できない革命
ここまでの要素は体験版でも十分革新的で面白かったのでGOTY級と思っていた。とはいえ、GOTY足り得るには面白いのは当然として何かしらの「凄さ」が必要であり、大手が作るゲームに比べるとインディーゲームはワンアイデア勝負という印象で、GOTYは与えられないという思いもある。
しかし、革新的なシステムはもう一つあり、それが本作の神髄でありGOTY足り得る一番驚いた要素。
本作ではキャラクターごとに初期ステータスや初期ボールが異なるだけでなく、固有の能力が用意されている。ボールが画面奥に到達すると手元に戻ったり、2方向に撃ったり、画面下で反射したり、画面奥から撃ったりなど特殊ボールとは異なるバリエーションが用意されている。
ヴァンサバで例えると経験値が下に落ちていく隠しモードがあるが、本作はそういう特殊な「モード」がキャラごとに用意されているイメージ。キャラクターごとに専用のプログラムになっているので、これでも十分凄い。
関連記事:『Vampire Survivors』武器強化&進化ステータスと小ネタメモ
さらに本作にはジャンルすら変化する固有能力もある。あるキャラはターン制に変化し、あるキャラは完全オートで進行する。この2キャラが出てきたときは本当に驚いた。どちらも凄いが、オートモードの方は壁の反射も利用し、経験値も拾い集めてしっかり攻略してくれるので放置ゲームみたいに周回させることもできる。

そして極めつけにこれらを凌駕する衝撃的なシステムがあり、キャラクターを二人組み合わせてステージに挑める。つまり、キャラクターの固有能力すらも掛け合わせることができる。2方向に撃って画面下で反射させたり、ターン制で画面奥から撃ったりなど組み合わせは自在。キャラクターは16人(Steam版はTwitch連携で+1人)いるので、単純計算で遊べる「モード」が数十倍に膨れ上がるということ。凄すぎる。とはいえ使い物にならない組み合わせもある。
キャラや武器固有で専用モード(モーションや技ではない)がある作品は『モンハン』や『FF7R』シリーズなどいくつもあるが、そのモード自体を組み合わせるというのは今までに見たことがない。後から追加しようと思っても不可能なので、初期段階から全て計算しつくして緻密に設計されているはず。それをメインとなる一人が作り上げてるのはちょっと信じられないくらい凄い。天才だと思う。
ちなみに本記事で〇×〇を多用してるのは、本作が「掛け合わせ」をテーマに作られてるため。ここまでの要素以外にもステージ自体も何か×何かという掛け合わせをイメージして作られている。
合わないところ×悪い点
ない。敢えて挙げるが減点対象になるほどではない。
ちなみに、いわゆる大作と比較して作り込むものが少なければ減点されうる要素も減るので、悪い点が少ない=良いゲームということにはならない。普通は加点されうる要素も減るはず。本作は一つ一つの加点が大きすぎるレアケース。
●SEに比べて印象に残らないBGM
加点できるほど素晴らしいSEなのに、対照的にBGMが全体的にスローテンポで印象に残らない。もしかしたらSEを聞かせるために敢えて弱いBGMにしてるのかもしれないが、個人的にはアップテンポな曲を用意してほしかった。
●1ステージ目のボスが一番強い
1ステージ目のボスは背後からしかダメージを与えられないため、ボールを壁に反射させるというブロック崩しを活かしたギミックになっていた。弾幕もそこそこ激しく、体験版をプレイしたときは今後どんなボスが出てくるのか楽しみだった。
しかし、2ステージ目以降はラスボスまで基本的に正面からダメージを与えられる。ボスの攻撃力は高くなるが弾幕よりも予兆のある攻撃を多用してくるので避けるのが難しくない。結構な残念ポイント。とはいえオートモードでも倒せるようなバランス調整にしてるのかもしれない。
●ちょっと面倒な拠点建築
ブロック崩しの拠点建築は効率よく配置しようと試行錯誤するとかなりの時間がとられる。もちろん強化につながるので惜しくはないし楽しんでるもののメインのダンジョン攻略の方が楽しいので、仮に拠点建築がなかったとしても総合的に同じくらいの満足度は味わえた可能性がある。
その場合はキャラやアップグレードをお金でアンロックするという味気ないものになってしまうが、多くのローグライトはそうなっているので難しいところ。
●全く活かされなかった魅力的な世界観
本作は隕石によって空いた巨大な穴に挑むという「メイドインアビス」のような魅力的な世界観が用意されている。オープニングではちょっとしたムービーが流れて世界観を解説する数行のテキストもある。が、ストーリーはこれだけ。エンディングでもちょっとしたムービーが流れるだけでテキストは全くない。
ストーリー自体は動画でも楽しめるので採点対象外だが、たとえばダンジョンやキャラクターそれぞれに世界観を補強するようなフレーバーテキストが欲しかったところ。現状では世界観を用意した意味が全くない状態になっている。
4.個人スコア
98点/100(最大99点)
※点数は「Steamおすすめする70点」を基準にレビュー方針に沿って加減点した感覚的なもの。
正直満点でもいいくらいだが、本作の仲間システムは個人的に求めているRPGのような仲間システムとは毛色が異なるので最大から1点減点。そのほかの不満点の減点を凌駕するほど加点要素が大きいものの、大手と比べて作るものが少なくて済むインディーということで1点減点した。
とはいえ間違いなく2025年の個人GOTY。体験版をプレイした段階では『FF7リバース』を超えないと思っていたら予想を遥かに超えてきた。
ベースシステムが「縦シューティング風ブロック崩し」という新ジャンルとなっていて、これを真似する『BALL x PIT』ライクな作品がたくさん出てきてほしい気持ちがある。しかし、モードの掛け合わせという前代未聞のシステムを実現している本作を超えるのはほぼ不可能。
ヴァンサバが出た当時は改良できそうな要素がいくつも思いついて実際にライク作品も大量に生まれたが、本作はあまりにも完成度が高すぎてライク作品が生まれるイメージができない。
新ジャンルの原点にして頂点に君臨し続けるゲームだと思う。
-2025/10/20




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